【解説】これは、トロツキーの論文「スペイン革命とそれを脅かす危険性」のイタリア語版に付した序文である。この中でトロツキーはとりわけ、スペイン革命における民主主義的スローガンの重要性を強調しており、まさにこの点で、イタリアのボルディガ主義者(「プロメテオ・グループ」)のセクト主義的立場を批判している。イタリアの新反対派は1930年に、アルフォンソ・レオネッティ、ピエトロ・トレッソ、パオロ・ラヴァッツォーリらによって結成された反対派。
私は、イタリアの新反対派が本書[「スペイン革命とそれを脅かす危険性」]を出版するという考えを心から歓迎する。昨年、イタリアの新反対派の同志たちと通信を交わした中で、私は、ファシスト体制を一掃する過程において民主主義的スローガンがイタリアで一定の重要性を帯びることになるだろうという仮説を提示した。今日、スペインの事件に照らしてみて、これと同じ思想をはるかにきっぱりと定式化する必要があるだろう。イタリア革命は、プロレタリアートの直接的な権力闘争という決定的な局面に入る以前に、期間の長短にかかわらず民主主義的「序章」を持つことになるだろう。スペインの経験はこのことに関していかなる疑問も残していない。この予備的時期において、プロレタリア前衛は明らかに民主主義の問題を無視することはできないだろう。スペインの事件に照らしてみるなら、民主主義的スローガンを原則的に拒否するプロメテオ・グループの立場は、理論的に正当性を持たないし、実践においては破滅的だろう。偉大な歴史的事実から学ぼうとしないものに、災いあれ!
この論文の中心的テーマは、最近の経験を用いて民主主義的スローガンに対するマルクス主義的態度を明確にする試みであると同時に、諸階級を越えた中立的で「人民的」な革命なる神話および階級的でも権力的でもない「民主主義独裁」という神話を批判することである。今日、コミンテルンの指導部は、スペインにおいてこの偶像をあがめる寺院を建立しようとしている。中国ではそのいけにえとして、多くのプロレタリアートが犠牲にされた。われわれは、鎧に身を固めた中間主義官僚のこうした試みと対決しなければならない。この問題は、スペイン革命の運命を通じて改めて提起されているのである。
イタリアの同志たちは、他の何にもまして、イベリア半島におけるこの偉大な事件の発展を注意深く追うべきであると思う。同じ問題は、別の形態と異なった力関係において、遅かれ早かれ――われわれは早い方を希望するが――イタリアのプロレタリアートの前に提起されることになるだろう。
1931年6月9日
英語版『トロツキー著作集 1930-31』所収
『ニューズ・レター』第22号より
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