【解説】この文献は、南アフリカ共和国の黒人労働者からアメリカ共産主義者同盟に宛てられた手紙について論じたものである。この文献には、最も抑圧された黒人労働者に対するトロツキーの並々ならぬ共感の念が示されている。
[編者注]
ここでトロツキーが触れているヨハネルブルグからの手紙はアメリカ共産主義者同盟に宛てられたもので、左翼反対派への加盟を申請することや左翼反対派の文書を配布することなどといった署名者たちの決定を述べたものである。国際書記局へ(アメリカ共産主義者同盟全国委員会にも写しを送る)
ヨハネスブルグのアフリカ黒人同志のある組織から送られてきた1932年4月26日付の手紙の写しを受け取った。この手紙には重大な徴候的意義があるように思われる。左翼反対派(ボリシェヴィキ=レーニン主義者)は、世界プロレタリアートの最も抑圧された層、したがって何よりもアフリカ黒人労働者の旗じるしになることができるし、そうならなければならない。どのような根拠にもとづいてそのように主張できるのだろうか?
左翼反対派は、現在、全世界で最も首尾一貫した、最も革命的な潮流である。労働運動におけるいっさいの官僚的傲慢に対する鋭い批判的態度ゆえに、左翼反対派は労働者階級と勤労者全体の最も抑圧された層の声に特別の注意を向けることができる。
左翼反対派は、スターリニスト機構のみならず、世界のすべてのブルジョア政府からの攻撃目標となっている。この事実はあらゆる中傷にもかかわらず大衆の意識に徐々に入りつつあり、それゆえに左翼反対派は国際労働者階級の最も抑圧された層の心からの共感をますます惹きつけるにちがいない。このような観点からして、南アフリカの同志からわれわれに寄せられた通信はけっして偶然のものではなく、深い徴候的な意義を持っているように思われる。
この手紙には24人の署名(と「その他」という書き込み)があり、南アフリカの同志は中国革命について特別の関心を示している。この関心はまったく正当である。この点は認める必要がある。被抑圧民族の労働者大衆は初歩的な民族的権利と人間的尊厳のための闘争を遂行しなければならず、まさに彼らこそ「民主主義独裁」の問題をめぐるスターリニスト官僚の支離滅裂な教義に対する報いを受ける最大の危険にさらされているのである。この偽りの旗じるしのもとで、国民党流の政策――すなわち悪質な欺瞞と自国の「民族」ブルジョアジーによる勤労大衆の蹂躙――は勤労者解放の事業にとっていぜんとして最大の害悪をもたらしうる。多くの国における争う余地のない歴史的経験に基礎づけられた永続革命の綱領は、アフリカ黒人プロレタリアートの解放運動にとって第一級の重要性を持ちうるし、そうならなければならない。
ヨハネスブルグの同志には、すべての重要問題に関する左翼反対派の考えを十分に知る機会がまだなかったかもしれない。しかし、それは、われわれがまさにこの瞬間にこれらの同志とできるだけ接近し、彼らがわれわれの綱領と戦術のもとに結集するのを同志的に支援することを妨げるわけではない。
すでにさまざまな組織のメンバーである10人の知識人がパリ、ベルリン、ニューヨークでわれわれの隊列に入りたいと要請してくるとき、私は次のように忠告するだろう――すなわち、彼らをすべての綱領的問題について一連のテストにかけなければならないし、彼らを雨にさらし、太陽のもとで乾かし、そのうえでさらに慎重に審査し、おそらく1人か2人を受け入れるべきだろう、と。
大衆と結びついている10人の労働者がわれわれのもとにやってくるとき、事態はまったく違う。小ブルジョア・グループとプロレタリア・グループに対するわれわれの態度の違いについて説明する必要はない。しかし、プロレタリア・グループが活動していて、その地域にはさまざまな人種がいるにもかかわらず、特権的民族の労働者だけで構成されているとすれば、私はそのグループを疑いをもって見るだろう。われわれが相手にしているのは労働貴族ではないだろうか、このグループは積極的または消極的な何らかの奴隷所有者的偏見に感染してはいないだろうか、と。
アフリカの黒人労働者がわれわれに近づいてくるとき、事態はまったく違う。このような場合、いまだ一致が明白でないとしても、私はこれらの労働者と合意に達することができるのが当然だと前もってみなす用意がある。なぜなら、彼らが置かれている立場のために、アフリカ黒人労働者は誰かをおとしめたり、抑圧したり、あるいは他者の権利を奪ったりしないし、またそうすることができないからである。彼らは特権を求めないし、国際革命の道にむかう以外に頂点にのぼることができないからである。
われわれはアフリカ黒人労働者、中国労働者、インド労働者、有色人種の大海のすべての被抑圧者の意識に至る道を見出さなければならない。人類発展の決定的保証は彼らにかかっているのである。
1932年6月13日
『トロツキー著作集 1932』(パスファインダー社)所収
『トロツキー研究』第31号より
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